映画日記「思い出の映画日記(洋画編)」

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七色に変化するカメレオンのように、ブログで様々な色を出していこうという意気込みでブログを続けるカメレオンブロガー2754です。

もう10年以上も前になってしまうのですが、
実は私、20代の頃は映画が大好きで、映画館、レンタル含め毎日のように映画を観ては
SNSで映画日記をアップするというような作業を繰り返していました。
コロナウイルスの感染拡大により大都市圏を中心に自粛要請も出ておりますし、
こういう機に映画を・・という情熱を蘇らせようと考えました。
そんなわけでものすごい数のストックがあるので比較的短くまとまった日記を多少の文章校正等を施し、
まとめてブログにしようと思います。
こういうの記録に残して見返すのも面白いですね。。。

今回は洋画の作品を集めています。
それほどネタバレしていないので面白そう!と思ったら観てほしいです。
(当時、TSUTAYAの回し者と言われてましたw)

the EYE(アイ)

2008年11月1日公開

監督:ダビッド・モロー、ザビエ・パリュ

キャスト:ジェシカ・アルバ、アレッサンドロ・ニボラ

日本の『リング』の世界的成功からか、東洋においてその独特なテイストを生かしたホラー映画がひとつのブームとなった。
このようなブームには当然のように駄作が相次ぐものだが、そんな中でもブームに乗っ取った上で新たな輝きを放つ作品も存在するのも事実だ。
タイ映画『the EYE』はまさしくそのひとつ。
開始から映像がぼやけているのはもちろん演出で、何せこの主人公が目の見えない女の子で、角膜移植手術に成功して初めて目が見えるようになるのだが、同時に霊的なものまで見えるようになってしまったという想像するだけで恐ろしい設定なのだ。
手術直後は視界がおぼつかないので映像もぼやけているというわけ。

しかし「見える」ということがこれほどまでに恐ろしいことなのか…
現実として手術により視覚を取り戻した患者が一週間後に自殺してしまうという事件があったそうで本作はその事件をモチーフに作られたらしい。

とにかく恐怖シーンは心臓に悪い。
特別グロテスクな映像はないのだが、その霊的な恐怖は何の前触れもなく突然出てくるもんで心臓に悪い。

しかも序盤からの数々の恐怖シーンは単なる前置きに過ぎず、中盤以降は急にストーリーが展開し始める。

ホラー映画としては珍しく、恐怖のみならず主人公の思いのようなものがしっかり伝わってくるのだ。
「恐怖」を受け入れ、闘うことで「克服」を目指す。

恐怖に飲まれ絶望に陥るか……
克服して希望を勝ち取るか……

『リング』に便乗した作品であることは否めないのかもしれないが、ホラー映画として壮大なるテーマを結末で示さなければならないこの作品は新しい道を開いた作品でもあるかもしれない。

ホラー映画に希望の光を!

★★★★

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アイズ・ワイド・シャット

1999年7月31日公開

監督:スタンリー・キューブリック

キャスト:トム・クルーズ、ニコール・キッドマン

スタンリー・キューブリック監督が『フルメタル・ジャケット』以来12年ぶりに撮った作品にして遺作。
一見理想的に見える夫婦。
しかしそこには闇が潜んでいた。
性欲の闇の部分?
トム・クルーズとニコール・キッドマン。
これも何かの因縁か?
ニコール・キッドマンが醸し出す危険な香りがたまらない。
嫉妬なんて簡単な言葉では済まされない、性の先に見える青白い炎。

でもやっぱり…
意味が解らない。
愛の中にあるサスペンスをえぐり出した感じ。
しかし謎は謎のまま謎としての余韻を残す。
妄想は現実味を帯びて襲い掛かる。
キューブリックは捻くれ者だ。
傑作と呼ぶに相応しい作品でありながら、この映画は酷すぎる…とも思わせる。

天才というものが常人では理解しがたい別次元の考えができてしまう
というのであればキューブリックにしっくり当てはまる。
トム・クルーズの表情は常に謎に身を置いていて、狐につままれた表情に見える。
踊って見せよう掌で。

男としても演技としても。
あの個性的なトム・クルーズも映画の色に飲み込まれた。
そこではひとりのただの男が踊らされているにすぎない。

これがキューブリックの描く女であり、性なのか?

全くもって意味が解らないw

★★

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アイランド

 2005年7月23日公開

監督:マイケル・ベイ

キャスト:ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン

シナリオ設定は素晴らしいと思います。
引き込まれます。

にも関わらず物足りなさを感じてしまうのは邦画アニメの『ルパンVS複製人間』を観ているからでしょうか。

とか言いながらもおれ好きです、これ。
興行的には日米ともに見事なまでに大コケしたようですが、個人的にはこけるような作品ではないと思うし逆にウケなかったことが不思議に思えるくらいです。
もしかしたらミステリアスな部分とSFアクションな部分が中途半端だったのかなあ。
前半は完全にサスペンス、後半は完全にアクションです。
もちろん僕はサスペンス部分で飲み込まれてますが、後半のアクションも秀逸な出来だったと思います。
しかし前半のミステリアスなスリルが、後半ただ観て楽しむ映画に成り下がってしまっているのはサスペンス好きには確かに残念なところかもしれません。

クローンだって生きたい。
クローンが人間に勝てるか。
テーマとしてもしけっこう興味深いですよね。

あと映像技術が物凄いのでそれだけでも観る価値はあるとは思います。

★★★

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アメリカンヒストリーX

2000年2月19日公開

監督:トニー・ケイ

キャスト:エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング

白人VS黒人の争い。
いかにもアメリカらしいじゃないですか。
タイトルからも見て取れるとおり、歴史の象徴です。

白人至上主義のカリスマが地獄で見たものは…

心の揺れ動く衝動は悲劇の過程に過ぎません。
犯した罪への実感は日が進むにつれて後悔として重くのしかかってくるものかもしれません。

エドワード・ノートンの演技は絶品です。
何より惚れ惚れする肉体です。
彼には信念があった。
強すぎた信念。
断ち切られるほどの風景。
メッセージが強すぎる。
個の思い、個の変化ではどうにもならない。
闇は連鎖しているからだ。
空白が惜しまれる。
しかしそれがなければ更なる闇を突っ走っていた。
では幸せとは?
そもそも社会の風習が悪の源?
時代に生まれた不幸を呪うしかない。
明るい未来を作るためにはこの悲しき背景を知ることだ。

アメリカを、深く知れ!!

★★★★☆

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アルマゲドン

1998年12月12日公開

監督:マイケル・ベイ

キャスト:ブルース・ウィリス、ビリー・ボブ・ソーントン

父は娘の幸せを願う。

娘は岐路に立たされる。

道を用意することはできるかもしれない。
そこにルーレットがあるわけでもない。
賽で決めるわけでもない。
自分の足で歩くのだ。

しかし父にはその道を閉ざす権利が与えられている。

父は娘の幸せを願う。

そしてその思いこそが世界を救う!

違う言い方をしよう。

家族を愛せない者が世界を救えるものか!

守るべきものがあるから人は苦難にも堪えられる。

エアロスミスの曲名なんだっけ?

そう、失いたくないものが

あるんだ。

父は娘の幸せを願う。

いかにもハリウッド!
これぞハリウッド!!

I Don’t want to miss a thing

★★☆

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アレックス

2003年2月8日公開

監督:ギャスパー・ノエ

キャスト:モニカ・ベルッチ、バンサン・カッセル

「時はすべてを破壊する」

これこそがこの映画の象徴。
カメラが手持ちらしく画面が揺れるような感覚なので、観ていて乗り物酔いしたような気持ちの悪い感覚となる。
更にこの作品、なんと時間的に各シーンが降順に並んでいるのでそのリバースしていく様が気持ちの悪さを増長させる。

更には世界最高の美人との声もあるモニカ・ベルッチが…

今起こった事件や出来事は過去を振り返ることではっきりする。
この手法、思いつきはしても実行する者はなかなかいないだろう。

『メメント』の手法も近い感覚だとも思うが、行ったり来たりで目まぐるしい『メメント』に比べ、『アレックス』は過去への一方通行。
観客を驚かせる映画を作ろうと思ったことがきっかけらしい。
撮り方にこだわるのもいいが、個人的にはそんな撮り方して何が楽しいのか理解に苦しむ。
この時点でギャスパー・ノエが悪趣味な監督であることは暗示されている。

いや、ほんと悪趣味。
「ノエは映画を破壊する」
と言ってやりたい。

でもそんな監督の思惑通りか、あの残虐な映像が頭から離れない。

破壊されたのはこの映画を観た私の心かも…

★★★

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インファナル・アフェア

2003年10月11日公開

監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック

キャスト:アンディ・ラウ、トニー・レオン

香港マフィアへの潜入を命じられ、10年近くもマフィアと身を共にし幹部にまで上り詰めた捜査官。
一方でマフィアから警察内部へ送り込まれ、警部へと昇進したスパイ。
そんな二人の生き様がついに交差する。

複雑な立場に立たされた男たち。
はたしてどのように打開するのだろうか。

いやいや、話も単純におもしろいけど、
何より作品から醸し出されるスタイリッシュさがたまらなくいい。
なぜスタイリッシュなのか?
物語の展開が息つく暇もなく実にスピーディーなのだ。
緊張感も相まって、次はどうなるのか?
と考えさせる展開でありながらも、
考えるヒマも与えない疾走感でラストまで駆け抜ける。
更にはそれでいて強引すぎるわけでもなく、
回収しきれない(?)くらいの伏線を撒き散らしているので
それが回収されていく爽快感もとんでもない。

欲望と正義。
保身と犠牲。
勝者はきっと示される!

★★★★

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裏窓

1955年1月29日公開

監督:アルフレッド・ヒッチコック

キャスト:グレイス・ケリー、ジェームス・スチュアート

ヒッチコックだとかグレイス・ケリーだとかそんな先入観を捨てて語りたい。

これは映画の一作品として類い稀なる作品なのです。
他人の生活を覗き見るという嫌らしい趣味。
その視点で動いてゆくストーリー。
初めは退屈な映画だと感じてたんです。
しかしストーリーが進むにつれてハラハラドキドキ、先が気になって仕方ない。
主人公の確信が真実なのかすら疑ってしまう展開に、先が読めなくなってしまう。

同じ景色、同じ人物、同じような生活を繰り返し見せられているだけなのにあまりにも多面的に興味をそそられる。

しかも主人公の目線でしかストーリーは進まない。
主人公が眠れば映像も途切れる。
回想シーンも一切ない。

それでもミステリーは成り立つ。

そして前言撤回。やっぱり言いたい。
ヒッチコック最高!
彼は我々の好奇心の掴み方を知っている。

見えそうで見えない真実。
推理してないのに推理しているような高揚感。
やはりここにはサスペンスの神が降臨していた-

★★★★☆

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エターナルサンシャイン

2005年3月19日公開

監督:ミシェル・ゴンドリー

キャスト:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット

過去の恋愛とはいえ人生で本気で愛した者との思い出を消すってことはとてつもなく過酷なこと…

劇中に読まれるアレキサンダー・ポープの詩は明らかに『エターナル・サンシャイン』を表現しているが、実はこの作品は「無垢な祈りは神に届く」的な発想が作り手から微塵にも感じられない。

しかし物語は「人間の意思が先端の科学を打ち破らなければならない」という構図で描かれるのだからおもしろい。

人間って過去を積み重ねることで未来を生きるものだと僕は思う。
そう定義づけると、過去を消すことって未来を生きることを否定していることになる。
記憶喪失なんて病気もあるが、記憶なく生きる不安はきっと想像を絶するものだろう。

なーんてことも論じてもみたいものだが『エターナル・サンシャイン』って実は思い切りピュアなラブストーリーで、一見SF要素が満載で一筋縄ではいかない作りになっているけど、その骨格は全くといっていいほど崩されていない。

フランス人という先入観もあってか、ミシェル・ゴンドリーからはどこかハリウッドに対するアンチテーゼを感じさせられ、そこが意識的に強調されすぎるのが見えてしまったりすると自己陶酔的な作品になりそうで怖いところだが、本作ではハリウッド界きっての人気脚本家チャーリー・カウフマンが組むことで絶妙な調和が生み出されている。
この調和こそが、まさしく”永遠の輝き”を生み出したと言い切りたい。

★★★

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エレファント

2004年3月27日公開

監督:ガス・ヴァン・サント

キャスト:ジョン・ロビンソン、アレックス・フロスト

カンヌ国際映画祭の歴史上、初めてパルムドールと監督賞のW受賞の快挙を成し遂げたとんでもない作品。
1999年にコロンバイン高校の生徒が、12人の生徒と1人の教師を銃で乱射したという現実にあった事件をモチーフに少年少女たちを軸としたドラマが展開される。

面白いのはアドベンチャーゲームのようなカメラワークで、同じシーンを別の視点で繰り返し観ることによって校舎の見取り図が自然と頭に入ってしまう作り。

そんなわけで校舎内の行く先行く先で誰に出くわすのかが事前に分かるという仕掛け。
犯人の進む方向に応じて「そっちはヤバイ!」みたいなスリルが味わえる、新種のサスペンス感覚。

そういや監督のガス・ヴァン・サントはヒッチコックの『サイコ』をカットから構成まであまりに忠実にリメイクした男なわけで、もともとサスペンスの描写には並々ならぬ思いを持っているのだろう。

それにしてもこのような接近の仕方がよりリアリティを増すものかと思えば本当に凄いもんだ。

オーディションで集めた高校生たちが実名で登場し、そのほとんどがあっさりと殺される。
どういう基準で選んでんだ?(笑)
人物像を何も描かれずにただ殺されるだけの子もいる。

なにしろ1日の出来事なので、殺す側も殺される側も人物像なんてわかるもんじゃない。
人物像も描かれなければ殺しもあっさりしすぎていて衝撃も薄い。
そうすることで、命に対しての無感覚さが伝わってくる。

比較的カラフルなのにノスタルジーに満ちた映像には感服させらる。

そこで平然を装うように風が舞い、青空が広がる。
そんなリアリティの創造もあまりに美しい。

★★★☆

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渇き Thirst

2010年2月27日公開

監督:パク・チャヌク

キャスト:ソン・ガンホ、キム・オクビン

人体実験から生き残り、ヴァンパイアと化してしまった男の物語。

とは言ったものの、実は劇中に「ヴァンパイア」というキーワードは出てこないんですよね。
それでも神父様が少しずつ怪物に変化してゆく様を巧みに演出し、ヴァンパイアであることを納得させてくれるわけです。
いかにもパク・チャヌク監督らしい。
何せシーンひとつひとつが常人のイマジネーションを上回ってくるものですから。

ソン・ガンホの演技力はもはや言うまでもないですが、ここで注目したいのがキム・オクビンの怪演!

本性を押し殺すソン・ガンホとは対照的に本性を剥き出しにして物語をグイグイ引っ張ってくれちゃってます。

まさに『渇き』に飢えた怪物たち…

『渇き』とは?
水分(血)で潤いを欲する喉の渇き。
そして欲望・欲求が満たされない心の渇き。

この作品は物事の全貌を言葉では語りません。
想像力を喚起し、映像で語りかけてくる作品です。

それにしてもこれ本当にR15でいいの?
内容が刺激的すぎて…
正直、僕のようなおっさんでも目を背けてしまいますw

★★

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キック・アス

2010年12月18日公開

監督:マシュー・ボーン

キャスト:アーロン・ジョンソン、クロエ・グレース・モレッツ

映画界きってのアイドル誕生の瞬間…

とにかく萌えた!
萌えながら燃えた!
オレはとんでもないものを観ちまったぞ!

主人公はヒーローにただ憧れるだけのオナニーが趣味の軟弱なオタク野郎。
序盤は笑える部分もあったが、オナニー描写に不快感を覚えたり冴えない人生とセンスの悪いコスチュームを見せられたりで、散りばめられてる笑いもどちらかと言うと失笑が多かったような…
しかしふと気づけば劇的に引き込まれている自分がいた。
それもそのはず。
ヒット・ガール登場!
この女の子は何者だ?
クロエ・グレース・モレッツちゃんだとよ。
わずか11歳の少女によるユーモア溢れるアクションシーンに驚愕する。
悪党どもを瞬く間に大虐殺!
呆気にとられるキック・アス。
呆気にとられるオレ。

触発されないはずがない!
キック・アスはヒーローとしての責任を背負ってみせる。
特殊能力も何もない。
しかし勇気という武器さえあれば、いかに平凡な男でもヒーローになることは可能かもしれない!

それは超人的な力やら人並み外れた精神力やらではない。

震災もあり危機的な困難に追い込まれている日本の現状において、『キック・アス』で盛り上がるなんて不謹慎だったかもしれない。
でもこの『キック・アス』を観ていると、何かに踏み出せる勇気があれば誰もがヒーローになれるかもしれないと思わせてくれる。
それは個人の資質の部分ではなくハートの部分なものだから、誰かに救われるんじゃなくて皆で救えるんじゃないかって。

おれって不謹慎?
『キック・アス』って不謹慎?

もう何言われたっていいや。
とにかく萌えた!
萌えながら燃えた!
オレはとんでもないものを観ちまったんだ!

★★★★

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奇跡の海

1997年4月12日公開

監督:ラース・フォン・トリアー

キャスト:エミリー・ワトソン、ステラン・スカルスガルド

肯定的に捉えよう。
信じるものは救われるのだ。

信仰心の強い主人公のベスが、教会から追放され、人々から迫害されることになる。

誰も間違ってなんていない。
ただ人が集まれば、どうしても社会の都合が優先されてしまう。
それで廃除されるのがベス。
最も信仰心が強いのに排除されるという矛盾-

しかし、
「信じる者は救われる」

たとえ教会から地獄行きを宣告されようと、強い信仰は最後に神より救われる。

しかしこの監督はどうしてこうも主人公を痛め付けるのだろうか。
その対象であるエミリー・ワトソンは秀逸でした。
特に表情の豊かさには驚かされます。
純真無垢な笑顔の中に潜む異質な眼光。
その瞳に吸い込まれそうな感覚に陥ったのは私だけではないはず。
それをどん底まで痛ぶる展開は映画製作というのを道具にしたレイプとすら思えてしまう。

そして過激さは増してゆく。
次に生け贄となる女優は誰だ?

もしこの『奇跡の海』を観てしまったなら、
とりあえず『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を観てほしい。
そしたらきっと『ドッグヴィル』にたどり着く-

★★★

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きみに読む物語

2005年2月5日公開

監督:ニック・カサベテス

キャスト:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス

ダメだ。
くさすぎる。
くさすぎて台詞もよめる。
恋愛ドラマとしてはなんともベタすぎるストーリー。
この物語にセックスシーンは必要ない。
愛はそこじゃない。
見せるべき愛は他にある。

でも本質はそこじゃなかった。

繋がってきた。
面影が重なってきた。
いや最初から分かっていたのかもしれない。
完全にネタバレ。
しかし…

嵐がふたりの愛を呼び覚ます。
この物語にセックスシーンは必要だ。
この物語だからこそ必要だ。

愛が愛を超えた。
可愛くて、笑顔が可愛くて、それはもう運命なんて言葉じゃ片付けられなくて。

とにかく読んで読んで読み続ける。
ずっと送り続けた手紙。
一年間もの間毎日送り続けた手紙。
それでも強く後悔した。
今度ばかりは…
何度でも読んで読んで読み続ける。

一瞬だけの奇跡を永遠に。
結末まで綺麗におさまった。

僕はただ純粋に、その物語に酔いしれる。

★★★

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グリーンマイル

2000年3月25日公開

監督:フランク・ダラボン

キャスト:トム・ハンクス、デビッド・モース

やり切れない心の葛藤が未熟な僕のハートを突き破ってしまった。

『ショーシャンクの空に』の監督、原作コンビということで

期待が膨張しすぎていた。
だから逆にこけてしまうのでは?
と正直不安だった。
観た。
予感は当たった。
しかしそう思った矢先…
終わってみれば映画館で人目を忘れて涙する僕がいた。
当時の自分にとってはやや難しい作品でした。
しかしこの涙と感動は紛れも無いものでした。
ここから感じ取り溢れ出た得体の知れない感情から
僕の映画日記が始まったと言っても過言ではありません。

生まれたことが罪だったなんてありえますか?
ショーシャンクが浴びせてきた光とは明らかに違う。
無実の罪を被せられた死刑囚と、法に従い守ることを使命とする看守たち。
神のチカラと現実が悲しく交差する。

絶望の中にも光を見せる。
映画の偉大さを深く感じる作品です。

★★★

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ゲーム

1998年2月7日公開

監督:デビッド・フィンチャー

キャスト:マイケル・ダグラス、ショーン・ペン

これはゲームなのか?
それともゲームに見立てた犯罪なのか?

先が読めない。
『セブン』という強烈な前置きが観る者の期待と不安を増長させる。
結果的にわずかな手がかりも見逃したくないので、釘付けになりながら推理を楽しむ。

まさにゲーム!
きっと我々も参加者なんだ。

そしてデビッド・フィンチャーは確実に想像を裏切ってくれる監督だ。

大成功を収めた『セブン』と『ファイトクラブ』の間に産み落とされた至極の作品をご賞味あれ。

女性に翻弄される情けない男、マイケル・ダグラスに天罰を!

★★★

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サイコ

 1999年9月11日公開

監督:ガス・ヴァン・サント

キャスト:ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘッシュ

名匠ヒッチコックが生み出した「サスペンスの金字塔」をなんとガス・ヴァン・サントがリメイク。

名作『サイコ』が過去の遺産として現代っ子に観られることなく埋もれていく様が堪えられなかったというリスペクトの感情のみから製作に踏み切ったというだけあり、脚色することもなく誠実に再現してみせたのが本作です。

で、この作品。
古典的だとかベタだという声も聞かれます。
そりゃこれだけの名作なのですから、教材にされて当然だと考えればベタといわれるのも納得すらしてしまいます。

しかしそれでも私には衝撃でした。

追い続けた犯人が犯人ではなかった-

なんてのはサスペンスでは常識でしょう。
しかし…

主人公が主人公ではなかった-

だったらけっこう驚きません?

そう、そういう驚きをナチュラルに見せちゃうんですよ、ヒッチコックは。

ラストのまとめ方は強引に感じてもったいなく感じましたが、エンドロールの見せ方は神です。

リメイクって「より良く作りたい」とか「自分だったらこう撮りたい」みたいな衝動から作るものだと思ってました。
でもただ現在の技術で再現しようだなんてただ好きなだけとしか思えません。
けど私もこれをきっかけにヒッチコック作品に興味を持った一人で、これはこれでガス・ヴァン・サントの功績なのでは?と考えてしまうのです。

少なくとも私にとってはリメイク版が出るという真の意味を認識させられた重要な一作です。

★★★☆

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殺人の追憶

2004年3月27日公開

監督:ポン・ジュノ

キャスト:ソン・ガンホ、キム・サンギョン

美しい麦畑で見つけた小さなトンネル。
しかしこの小さいはずのトンネルがなかなか抜け出せない。
何とかくぐり抜けてもそこはまたトンネル。
刑事たちのどうすることも出来ない憤り、積み重なる苛立ちや焦りが画面いっぱいにほとばしる。
疑えば疑うほど、追えば追うほど、理性が崩壊してゆく。

韓国の映画文化が羽ばたいた瞬間を目撃したかもしれない。

全体的に地味な内容にも関わらず、じわりじわりと沸き上がってくる情念に恐怖が絡み合ってくる様の凄まじさときたらもう…
プロットは単純なもので、韓国で実際に起きた連続強姦殺人事件であり、それ以上でもそれ以下でもない。
シナリオ構造も時間が前後することもないし、カットバックが多用される訳でもなく、ほぼ一方通行。

特別なアイデアや特撮技術に依存せずに映画撮影そのものに向き合った努力の結晶なのだろう。

これを撮ったのがまだキャリアの浅い当時34歳のポン・ジュノ。
これは奇跡か。
このポン・ジュノという男は、映画制作において悪魔側の視点から組み立てて描く監督ではないだろうか。
よって世のモラルや正義感といったようなものはあまり重要視されない傾向に見える。

この視点さえ受け入れてしまえば間違いなく神域。
恐るべしモンスターが映画界に舞い降りた。
そしてそのモンスター監督がグエムルというモンスターを産み出し、韓国の歴代興行成績を塗り替えてしまったのは記憶に新しい。
もしかしたらこのモンスターを打ち破った時こそが韓国映画の更なる飛躍なのかもしれないな。

『グエムル -漢江の怪物-』がナンバーワンに相応しい作品かどうかはここでは言及しない。
しかしこの『殺人の追憶』こそが最高傑作であることを僕は声高らかに宣言したい。

★★★★☆

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さらば青春の光

1979年11月17日公開

監督:フランク・ロッダム

キャスト:フィル・ダニエルズ、マーク・ウィンゲット

ふぁふぁふぁふぁっきゅーっ!!

踊りたくなっちゃう♪

「My Generation」炸裂の瞬間、おれ映画の中に入って叫んでました。
嫉妬してレコード止めて「My Generation」っすよ?
反則っしょ?
おれロックで踊ってました。
おれにとってクラブイベントはロックなんです。
The Whoといえば「My Generation」なんです。

映画としては正直微妙だった気もしなくない。
しかし60年代のイギリスの青春の味わいは格別です。
モッズとは?
いやThe Whoとは?
Sex Pistols、Clash等、70年代は反骨のパンクロックが時代を席巻する。
それはロックンロールを愛するものが一度は憧れるシーンであろう。
しかしThe Whoの曲が色褪せることはなかった。
むしろシンクロしている気さえもする。
そう彼等が放ち出す輝きはパンク精神に通ずるものがあるのだ。
この映画を観て感じたこと。
The Whoも、そして青春の光も、パンク精神なんだと。

とことん走って狂うように踊ってぶっ飛んで、誰もできないことに憧れる。

反骨精神は魂を燃え上がらせる。

We are Mods!
We are Mods!

大人になんて…
アドレナリン満開!
たどり着いた先は…
そう、大人になんて…

The Kids are Alright!!

★★★☆

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縞模様のパジャマの少年

 2009年8月8日公開

監督:マーク・ハーマン

キャスト:エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン

幼い頃、僕は世間や社会の礼儀やしきたり、暗黙のルール等、不思議なことでいっぱいでした。
全能な神様の存在を信じる中で、法律という存在も不思議でした。
子供の僕の脳では深入りできない域だったので、大人たちの行動に違和感を感じてました。

この映画の子供たちを見ると、そんな子供時代に抱いた気持ちを思い出させてくれます。

そしてそんな僕に大人たちが真実を知らせず嘘で覆い隠しているとしたら…

農場にお揃いのパジャマを着た人たちが集まってる。
その見たままを受け入れるしかできないでしょう。

展開が読めてしまっても戦慄せずにはいられない。

そう、これはナチスだのユダヤ人だのそういう悲劇を知らせることの先の何かを感じ取る映画だと思います。

子供時代の擬似体験が大人となった僕に対して、これでもかと強く訴えかけてくる。

本当に壊したくないものはどれ?

①地位
②名誉
③子供の心

答えはこの映画を観た後で!

★★★★☆

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シャイニング

 1980年12月23日公開

監督:スタンリー・キューブリック

キャスト:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュバル

仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
仕事ばかりで遊ばない そりゃあオレでも気が狂う…

本作に対して原作者のスティーブン・キングが怒りをあらわにしたというエピソードは有名だが、
確かにキューブリックらしさが散りばめられている感は素人目にも明らかなので、
それが前面に出すぎた作品なのだろう。
逆に『2001年宇宙の旅』はキューブリックとクラークの徹底的な話し合いのうえ、
持ち味が調和された作品に仕上がっているのも比較するとおもしろい。
奇人・狂人(ここではあえて天才とは呼ばない)に映画化という武器を与えることは、
破壊されることを覚悟しなければならない。

撮影はほとんどがホテルのみ。
三谷幸喜の『THE有頂天ホテル』のような愉快なものではない。
そういう閉鎖された感覚が怖さ以上に不気味さを増幅させる。

そして映像が解放されたと思った矢先、雪にまみれた鬼ごっこが開始される。

観てる時は真剣なんだけど、こうして書いてみたら笑えちゃうんですよね。

思い返せばキューブリックの作品はどれもそうかも・・

★★★

TSUTAYA  Amazon

17歳のカルテ

 2000年9月2日公開

監督:ジェームズ・マンゴールド

キャスト:ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー

なんという刺激…
精神病棟で芽生える仲間意識。
異常と正常の境界。
そして17歳…

ウィノナ・ライダーが主演だけでなく、製作指揮も買って出たほどの意欲作!
アンジェリーナ・ジョリーの大熱演!!

女優たちが輝く映画。
いつのまにか、溶け込んでしまって-
正常と異常の狭間に揺れる。
その境界は我々の想像をはるかに越える痛みと苦しみが。

こんなところにも青春の種が…

芽生えて
咲いて
咲き乱れて
声も涙も枯れ果てて

解き放て!
裏切りではない
成長-
目標がはっきりしたなら
卒業検定は訪れる。

どんより重い空気に包まれて
光を見ると闇が見える。

覚醒する敵意。
そこから導かれた結末こそ…

名作『カッコーの巣の上』と比較されるのも常套だ。
けどそんなことどうでもいいや。
今振り返ればこの作品が2人の女優の岐路だった…

★★★★

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ショーシャンクの空に

1995年6月3日公開

監督:フランク・ダラボン

キャスト:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン

これは自由を諦めていた男の鮮明なる記憶の物語。

無実なのに状況から罪に課せられた男との出会い-

それはショーシャンクの奇跡…

閉鎖と開放。
この物語はその繰り返しにすら感じる。
その規模はどんどん大きくなって…

そこには罪を背負った男たちのドラマがある。
希望も絶望も喜びも哀しみも恐怖も詰まっていた。

音楽は頭の中にも心の中にも植え付けられる。
その豊かさを失ってはならない。
なぜならそれこそが希望…

希望は光にも闇にもなる。

アンディーの希望…
トミーの希望…

光なのか?
闇なのか?

権力を振りかざし、ひたすら悪事に手を汚す独裁者。
誰か彼を成敗してくれー!!
なかなかおらんぞ、ここまで腹の立つ奴は。

そして奇跡の日…
それはあまりにも…

自由…
ジワタネホ…
記憶のない海で…

誰もが認める最高の映画とは?
この物語から放たれる輝きこそ奇跡だ!

★★★★★

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真実の行方

1996年11月2日公開

監督:グレゴリー・ホブリット

キャスト:リチャード・ギア、ローラ・リニー

真実や正義なんて二の次。
弁護士だって欲しいのは金と名声なんだ。

法廷の真実なんてものは、陪審員の頭の中にある真実に過ぎない。
法廷戦術を駆使して被告の無罪を勝ち取るのが弁護士の使命。

とはいえ、検事や弁護士を志すほどの者の心に正義は必ず存在するはず。
事実が正義とは限らない。
隠された真実を暴かなければ真の正義は見えない。

「罪が証明されるまで人は無実」
「僕は基本的に人間は善だと信じている」

そんな主演のリチャード・ギアも霞んでしまうくらいの圧倒的な存在感を示したのが本作が映画初出演で容疑者役のエドワード・ノートン。
こいつがとんでもない。
天使のような笑顔からは考えられないような・・・
彼の存在が作品そのものの緊張感を高めている。
そして彼の存在そのものがその衝撃を引き立てる。
それこそが「真実の行方」なのである。

★★★☆

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スラムドッグ$ミリオネア

2009年4月18日公開

監督:ダニー・ボイル

キャスト:デブ・パテル、フリーダ・ピント

スラム育ちの青年がミリオネアになること。
その期待は貧困に苦しみながら生きる人々の夢。

「ファイナルアンサー?」

日本でも『クイズ$ミリオネア』としてお馴染みだったあの人気番組のインド版です。
ちなみに監督のダニー・ボイルはイギリス人で、実はこの番組もイギリスのミリオネア(原題『フー・ウォンツ・トゥー・ビー・ア・ミリオネア』)が起源でアメリカをはじめ、インドや日本に普及したそうです。
そんなイギリス人がインド映画を撮った…

監督がイギリス人で中身はインド。
キャストもインド人のみ。
これはインド映画なのか、それともイギリス映画なのか?
この意味がわかりますか?
過去、しかもほんの60年ほど前までインドを植民地としていた国の監督なのです。
そんな彼が独立したインドの不幸な実態を晒すなんて恐ろしい話です。
両国は歴史的トラウマに加え、経済格差もあるわけですから。
この映画はインド映画ではなく、イギリス映画です。
いかに映像をインドとインド人のみで固めてもイギリス映画です。
でなければとんでもないことです。

しかしまあ、そんな「イギリス+インド」な作品の中に日本的な魂を感じたのは僕だけでしょうか?

それはまさに『水戸黄門』

ケンコバに「正気ですか?」と聞かれそうですが、深い意味はないです。

でもここではやっぱり…

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

人生楽ありゃ苦もあるさ♪

てなわけで、
必ず手に入れろよ!
そこで兄弟の愛や憎しみから解放されるのだから…

★★★

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スリーピーホロウ

2000年2月26日公開

監督:ティム・バートン

キャスト:ジョニー・デップ、クリスティーナ・リッチ

恐怖とファンタジーとユーモアの化学反応。
そこにハンサムなだけでなく独特な味のあるジョニー・デップ。
真面目でインテリぶってるけど、それゆえの動きの滑稽さがたまりません。
更には怖がりで腰抜け。
でもそんな欠点もデップにかかれば魅力的。
凄いとか通り越して、不思議ですよね。

監督はティム・バートン。
ジョニー・デップとの名コンビはもはや話すまでもない。

伝説の首なし騎士による連続殺人事件に挑む捜査官の姿を描くゴシック・ホラー。
ティム・バートンらしく、ホラー映画にも美しさを求めたような。
そんな不思議な映像美が恐怖やスリルを魅力的に包みます。

ホラーだからと構えなくても良いです。
確かにグロテスクな部分もあるけどファンタジー要素も強くて本質はそちらな気さえします。

ホラーは苦手だというあなたも一度足を踏み入れてみてはどうでしょうか?

★★★☆

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セブン

 1996年1月27日公開

監督:デビッド・フィンチャー

キャスト:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマン

アンビリーバボー!

追い詰めたはずが追い詰められた。
銃を持つ右手が怒りに震えてる。

「私のしていることは特別だ」

精神異常者による殺人?
動機不明の殺人劇。

「SEVEN」
それは結末。
「SEVEN」に「SEVEN」で終わる。

刑事は誇りを持って闘った。
しかしこればかりは…

殺人鬼は冷静だった。
こいつ何言ってんだ?
意味がわからない。
しかし結末を知ってからこの男の語りを聞くと納得せざるを得ない。

敏腕刑事が定年を目の前にとんでもない大事件に出くわしたものだ。
その仕事がどれだけ辛く厳しいものかを最後の最後に改めて実感する。
そしてどれだけ深い愛情を背負うかも痛感する。

この結末を予想できるか?
僕にはできなかった。
だからその僕の心に重くのしかかった余韻は消えてはくれなかった。

僕は阪神大震災の激震を身を持って体験しました。
時を経て、この映画を観て心にだって地震が起こることがあるってことを知りました。

★★★★☆

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セント・オブ・ウーマン / 夢の香り

 1993年4月29日公開

監督:マーティン・ブレスト

キャスト:アル・パチーノ、クリス・オドネル

「誰よりも無惨だったのは魂が潰された奴だ」。
光を失い闇に覆われた。
心も深い闇に沈んでしまった。

その男、家族にすら言えない闇を会ったばかりの青年に叩き付ける。
青年がその悲痛の叫びに応えるとは思えなかったのだが…
盲目の退役軍人の闇に光を照らす可能性を秘めた唯一無二の存在となる。

心に闇を持った人間が眩しいくらい光り輝くタンゴを躍る。
光と闇のコントラストが作品にメリハリを与える。
このタンゴのシーンについては周りのエキストラやスタッフが
その情景を目の当たりにしてあまりに素晴らしくて呆然と見入ってしまっていた
というエピソードもあるくらい素敵なシーンである。
それにしてもアル・パチーノは凄い!
彼の表現そのものが魂の塊だ。
汚い言葉も多いが、だからこそ胸に迫るようなエネルギーが漲っている。
この言葉の迫力がアル・パチーノの長所であり、短所であることは間違いないが、そこに感じる信念のようなものがピタリと役にハマったようだ。
心をグッと引き寄せるオーラがハンパない。
盲目ということで瞳を全く動かさない演技も見事だが、
何よりパチーノにしか出せない男の色気のようなものが素晴らしい。

パチーノに賞を獲らせたいという思いを込めた作品なのかもしれない。
そんな作品だから青年のように自然と彼を追い掛ける。

★★★☆

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ソウ

2004年10月30日公開

監督:ジェームズ・ワン

キャスト:ケイリー・エルウィズ、ダニー・グローバー


暗闇…
それは恐怖を増長させる。
光が…
しかし密室。
そこには死体。

安っぽい?
しかし恐怖心というものはそんなところから湧き出るものではない。
本質はサスペンス。
犯人?なぜ?
手掛かり?

パニック!!!!

えげつない。
推理しろ。
あまりにもスリリング。
生き延びたけりゃ人間捨てろ!
救いたい人がいるのだろ?

殺しではない。
そういう状況に追い込んだだけ。
その名はそう…
「ジグソウ」

超電撃!!
脳を稲妻が刺激して鼓動は胸をぶち破る勢いで高鳴ってくる。

胸騒ぎ…
襲い掛かるような…
それは迫れば迫るほど…

やばい!
破裂しそうだ。

闘い?
謎解きはスリルと共に!
この世に解けない謎などない!

しかし…
その前に…

ゲームオーバー?
これもどんでん返し?
ただ衝撃の余韻が…

その正体…

結果、開いた口が塞がらない。

★★★★☆

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ソウ2

2005年10月29日公開

監督:ダーレン・リン・バウズマン

キャスト:ドニー・ウォールバーグ、ショウニー・スミス

『ソウ』が生まれ、全世界が震撼した。
その衝撃から2は約束されていた。

よりスケールアップした死のゲーム。
これはまさにスリルと恐怖を増したバトル・ロワイアル。

ジグソウを追う刑事の前で、仕掛けられたゲームが展開される。
そこにはなんと息子の姿が…

個人的な意見を言わせてもらえば1を超えたなんてとてもじゃないけど思えない。
それはこの映画の魅力はスリルと恐怖ではなく、追い込まれた人間の細かい心理描写とサスペンションにあると考えているからだ。

しかし結局この物語の真相にまんまと騙された僕に後味として恐怖やスリルといったテイストは残っておらず、またしてもその衝撃の余韻にただ唸り続けるだけだった。

完結するとは思えない『ソウ』シリーズだが、続編が駄作となっていくパターンは見たくない。
おれ、『ソウ』が好きだから。

★★★☆

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チェンジリング

2009年2月20日公開

監督:クリント・イーストウッド

キャスト:アンジェリーナ・ジョリー、ガトリン・グリフィス

アンジーの化粧が濃い。
ただ口紅が赤すぎるせいでそう見えるのかもしれないが、化粧が濃い。

しかしそんなことはお構いなしに泣かす泣かす。
泣いて泣いて、涙で化粧を崩すアンジー。
クリント・イーストウッドの趣味なのか?(笑)

そんな涙の中でも息子を求め続けた母が、他者のために流す涙の美しいこと。

そして力強く希望を語り歩き出すその姿のたくましいこと。

サスペンス要素に溢れ、気を許す暇も与えない展開で物語が進むが、腐敗した権力を相手にしてもただ我が子を取り戻そうという一心で戦う母の生き様こそが物語の核であることは明らか。

失ったものを取り戻すため…

しかしクリント・イーストウッドという監督は良い意味で観衆を裏切ってくれる監督だ。

ここで核心には触れたくないが、とにかく取り戻すことではなくなっていたのだ。
手に入れること。
手に入れたものはもう言うまでもないだろう。

★★★★

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つぐない

2008年4月12日公開

監督:ジョー・ライト

キャスト:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカボイ

ひとつ歯車が狂えば
その悪循環は加速し-

あのキーラ・ナイトレイが少女に食われた。

引き裂かれた愛

少女が窓から見たもの-

その光景が彼女に残したもの-

「ここにブライオニーはいない」
なのになぜブライオニーの名を?

行き着く先は全て「つぐない」なのか-

人間って過ちを犯してしまうものですよね。
というより過ちを犯さずに生きれる人間はいないと思います。

時に犯してしまった過ちが取り返しのつかない結果を生んでしまうケースもあります。
不幸にもブライオニーの犯した過ちは2人の人間の運命を狂わせてしまう大きな過ちだったのです。
人間は過去をやり直すことはできません。
ではどうすれば償えるのでしょうか?

事実を正直に語ること-
軽やかなタイプライターのリズムが重く感じられてくる。
そう、このリズムもまた、つぐないを響かせていたのですから。

けどこれで「つぐない」は果たせたのでしょうか?
それこそ小説の読者、そしてこの映画を観た我々が判断するしかないでしょう。

償い切れない罪…

委ねられた僕たち…

幸せ…
ならなきゃ…

……しよう
……なら
どんな……も
……ことが
きっと……
絶対……してみせる!

世界中の恋人たちに、幸あれ!!

★★★☆

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デイジー

2006年5月27日公開

監督:アンドリュー・ラウ

キャスト:チョン・ジヒョン、チョン・ウソン

舞台はオランダ・アムステルダム。
芸術的な街の色彩はあまりに美しい。
そしてカメラはとことんチョン・ジヒョンを可愛く撮ることに賭けている感じ。
美しい色彩は女の美を更に際立たせる。
けどこれが『インファナル・アフェア』のアンドリュー・ラウの作品なのか?と首を傾げたくなる。
切れ味鋭いアクションシーンはさすがに見事なものだが、お得意のサスペンス・アクションも韓国映画特有の甘いラブロマンスな要素に飲み込まれてしまったような…

とにかくグダグダ。
そして退屈。

中途半端に主体も定まらず、まるで「グダグダ感をとりあえず美映像でごまかしておけ」とされているかのようで…

それでも三角関係をいかに整理するのかという興味を持たされるわけだが、そういう方向に持っていっちゃうか…
展開にも無理があるだろ。
でももうそんなことはいい。
無理のある展開は韓国映画においてはごく普通であり、今更つっこむこともないだろうw
とりあえず殺し屋に感情移入しとけ!
楽しむにはそれしかない。

でもやっぱり、無理あるわぁ

★★

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トイ・ストーリー3

 2010年7月10日公開

監督:リー・アンクリッチ

人間とおもちゃの関係がこれほどまでに崇高なものだとは…

僕のおもちゃは今いったいどうなってしまっているのだろう?

LEGO、ミニ四駆、ガンプラ、……
いくら探したって出てきやしない。
悲しいことに壊れて捨てられたのか、興味がなくなって捨ててしまったのか、それすらも覚えちゃいない。
それって酷すぎるじゃないか。
たぶん阪神大震災の被害に遭った時だろう。
それにしたって、記憶ってのはいい加減なもので、別れを覚えていないなんて酷すぎるじゃないか。

この作品の売りはもはや3Dなどではない。
ウッディやバズらのおもちゃたちに命が吹き込まれ、その温かいストーリーに魅了されるのだ。
思えば僕も子供の頃におもちゃで遊んでいる時は、おもちゃに命を吹き込んで遊んでいたではないか。
それはきっと僕だけじゃないだろう。
懐かしい思い出…
あの心踊る感覚…

ピクサーの物語はどうしていつもこんなに温かいのだろうか。

高校生に成長したアンディの自分のおもちゃへの思い入れ…
それは高校時代の僕とは明らかに異なるものでしょう。

本当に僕って酷い奴だ。
この作品を観たら嫌でもそう思う。

困ったもので、そんな僕もいつしか子を持つ親の立場になったわけで…
子供には思い出に残る素敵なおもちゃを買ってあげたい。
甘やかしたいわけではなく、この感動に触れさせてあげたいんだ。

★★★★

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時計じかけのオレンジ

1972年4月29日公開

監督:スタンリー・キューブリック

キャスト:マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー

みんなご存知、スタンリー・キューブリック監督の代表作。
まずこの人の作品に我々がついていけるか。
そこからですね。
僕はというと、残念ながらついていけていないです。
けっきょく何を伝えたいのだろう。
いや、解るんです。
解るんだけど解らないんです。

なのにすごい刺激されます。
それは心とは別のような。
脳かもしれない。
一言一句聞き逃したら巻き戻したくなります。
自分の理解を逸した作品、それは基本的に駄作と感じます。
しかしこれは僕の理解を越えて神の領域へ達してしまったような作品。

この痛みこそ狂気だ。
そう、この映画はおれにとって凶器だ。

★★★★

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トム・ヤム・クン!

2006年4月22日公開

監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ

キャスト:トニー・ジャー、ベッドターイ・ウォンカムラオ

進化するトニー・ジャー!
4分間の長回しアクションは噂に聞いていたので、構えて観ちゃいました。
ただその休む間もなく繰り出されるアクション映像から目が離せないもんで、4分だとか時間なんて見る余裕もなく、とにかく「すごい」「ぶったまげた」という感想で十分。

更にはそれをも超えるインパクト!
49人怒涛の関節キメ!!
普通に考えて1対49で勝つには手数を少なく仕留めることを要求されることだろう。
相手を効率よく仕留めるのに関節技で骨を折ってしまえばそりゃあ常套手段だと納得せざるを得ないだろう。
ただしもちろん相手が一人ずつ交代でしか攻めてこないことは体術を売りとするアクションではつっこんではいけないものとする(笑)

いやもう、理屈とかドラマとしてとかそんなことどうでもいいっしょ。

トニー・ジャーの驚異的なアクションを堪能できればそれで十分。
ジャッキー・チェンは引退し、ジェット・リーも機械のお世話にならなければホンモノのアクションを見せることができなくなっているこの時代にトニー・ジャーのホンモノのアクションはその価値を究極に高めていて、まさに救世主と呼びたい存在である。
ちなみにアクション映画をほとんど観ないのでほとんど語る機会もないのだが、実は僕はかなりのブルース・リー崇拝者だったりする。
格闘スタイルは異なりますが、トニー・ジャーは僕にとってそんな熱い思いを蘇らせてくれる貴重すぎる存在なのだ。

ジャッキー・チェンも彼の存在があることで、安心して引退できるのではないだろうか。

無茶して若死にしないことをただただ願います。

★★★☆

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ドラゴン怒りの鉄拳

1974年7月20日公開

監督:ロー・ウェイ

キャスト:ブルース・リー、ノラ・ミャオ

言うまでもないが・・
ブルース・リー最高!

言うまでもないが、声高らかに何度でも言いたい。
ブルース・リーである。

狂気に満ちたブルース・リー。
怒りが沸点に達したブルース・リー。

中国万歳!!
腐れ日本人め!!

いやいやいやいやいや!

まあいいや。
これも文化さ。

リーに魅入ってしまえばそんなことどうでも良くなる。

ストーリーはとにかくシンプル。
だからこそ気持ちがシンプルに盛り上がる。
一言で言うなら「わかりやすっ!」

とにかくブルース・リーを見てほしい。
この作品のリーを見てほしい。
表情が引き締まりカラダも引き締まる!
そして魂の叫び!!
カラダの芯から熱くなる!

「自分の罪は自分で償う」

銃声を掻き消す怪鳥音。
ブルース・リーはいとも簡単に日本を蹴散らしその先にある自由の国へ…

目に焼き付けてほしい。
ここに放たれる怒りの鉄拳を!

終劇

★★★

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ドラゴン危機一発

1974年4月13日公開

監督:ロー・ウェイ

キャスト:ブルース・リー、マリア・イー

いやー、たまんない。
たまんないです。
おれ、このB級感がたまらなく好きなんです。

これがブルース・リーなもんだからそりゃもうたまりませんよ。

闘わせたら強いけどキャラ的にはけっこう迂闊で愛嬌があるブルース・リー。
誘惑に負けちゃうブルース・リーの哀愁の表情もたまんない。
酔っ払えば酔拳でも飛び出すんじゃないかと期待して観てしまうと馬鹿みたいな場面でも楽しくて仕方ないんです。

映画としては酷い演出の部類かもしれない。
ストーリーの展開もお遊戯会のようなノリかもしれない。
でもいいんです。
B級でいいんです。
観ましたか?
ブルース・リーの華麗な身のこなし。
超絶のカンフーアクション!
ブルース・リーが強けりゃそれでいいんです。
ノラ・ミャオが可愛いけりゃそれでいいんです。

★★★☆

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ドラゴンへの道

1975年1月25日公開

監督:ブルース・リー

キャスト:ブルース・リー、ノラ・ミャオ

とにかく決闘シーンが神!

格闘家に少しでも憧れを持った者が格闘技を志すきっかけになるには十分すぎるような華麗なる体術。
思えば日本の大方の格闘漫画もブルース・リーが基盤になっている気がする。
『北斗の拳』はもちろん、『ドラゴンボール』だって明らかにそうだ。
『ナルト』や『グラップラー刃牙』のキャラクターにも影響が見られる。

スローモーションにしても飽きずに観れる格闘シーンの華麗さにはただただ見とれるしかない。

ブルース・リーはもちろんだが、チャック・ノリスもアッパレ!

いやいやこの決闘への持って行き方もまた映画界においても影響力大!
陳腐かもしれない。
それでもこのシンプルな盛り上がりに応える決闘シーンはやはり神域なのである。

僕は特別アクション映画が好きなわけではない。
それでも少年バトル漫画に食いつきエキサイトする僕の気持ちを揺さぶるにはあまりに偉大な作品だ。
漫画では表現しきれないであろう間合いとでも言いましょうか…

それにしてもノラ・ミャオはいい女になった。
大人の魅力も兼ね揃え無敵の美しさにテクニカルノックアウト。

《終劇》であるw

★★★☆

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ドリームガールズ

2007年2月17日公開

監督:ビル・コンドン

キャスト:ジェイミー・フォックス、ビヨンセ・ノウルズ

歌で感情を表現する。
歌手の宿命。
失恋は名曲を産む。

プロデューサーとは実力の見極めと同時に商売としての見極めが要される。
当たり前のことだが、最終的に求められるのは後者だ。

しかしこれは自由の国ならではの大企画。
人種差別を打ち破る黒人の夢を描いてる。

それに巻き込まれた3人娘。
いやこれは飛び込んだといった方が正しい。

決裂パターンとしてはいかにもよくありそうなパターン。
ここはプロフェッショナルな世界。
実力があれば何とかなる。
あとはそれを生かせるか、また生かせる環境があるか。

この女には信念があった。
恋愛は人を狂わせる。
それに乗っかるのも手段のひとつ。

主義主張がぶつかる。
地位を手に入れる人は傲慢になる。
でも貫く心と意志があるからこそ、成功への階段がある。

必要ない、全くもって必要ないけど、捨てられないもの。
それがプライド。

歌は心だ。
ソウルこそがシンガーの真髄だと思い知らされた。

初めて感情を剥き出しにすることで才能が開花された気がした。

自分の声を信じて!

曲がりなりにもエフィは大切なことを教えてくれた。

そしてどんなに才能があっても独りでは勝てない。

ジェニファー・ハドソンは映画のタイトルを現実にしましたね。

★★★

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ナイト・オン・ザ・プラネット

1992年4月25日公開

監督:ジム・ジャームッシュ

キャスト:ウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ

夜のタクシーオムニバス。
舞台はそれぞれロサンジェルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ。
その夜の同一時間にタクシー内で起きる騒動を通じてそれぞれの街の魅力、人の魅力を存分に味わえる。

ロスでウィノナ・ライダーのあまりのかっこよさに胸躍らされ、引き付けられたと思ったら舞台は一新、ニューヨークへ。

なんたってタクシードライバーが運転できないんですもの(笑)

パリはパリらしいプライドの高さと気品さが。
そしてそこには偏見をものともしない強さが。

ローマはベニーニの独壇場。
喋るわ喋るわ面白いわ。
全てを陽気に感じさせる話術とテンションはイタリアンの真骨頂。
しかし神を冒涜する男の身に降りかかるのは?

締め括りはヘルシンキ。
時差はあれども時を同じく、各都市に見え隠れしていた人情劇たるものがここに集約される。

ジム・ジャームッシュ監督の個性は素敵すぎる。
醸し出されるほんわか感がたまらない。

ほんわり笑ってほんわり泣いて
映画鑑賞の充実感をとことん堪能しよう。

★★★★

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ニキータ

1991年1月12日公開

監督:リュック・ベッソン

キャスト:アンヌ・パリロー、ジャン=ユーグ・アングラード

手に負えない不良娘が美しき殺し屋に変貌してゆく。
そこで愛を知り、自分の置かれた現実を知り、心が痛んでゆく。
そんな彼女に対する愛し方も様々だ。
彼女を育て彼女の全てを知りながらも、知ってるがゆえに立場上、純粋に愛することができない男は残酷なやり方でしか愛を表現できなかった。
逆に純粋に彼女を愛し、真っ直ぐに彼女と向き合える男は、彼女の全てを知ることができなかった。

これだけ愛されるんだから本来なら幸せでいられるはずなのに…
男たちは互いを責めることなく、思いを共感しながら言葉を交わす。

後にハリウッドでリメイクされるのは有名な話だが、やはりこのアクション映画はフランス的だ。
暗く重い空気が流れる中、そこに漂う哀愁とスタイリッシュな映像のコントラストが絶妙に絡み合う。

どれだけ愛していても、本気で愛しているがゆえにそれに応えることができないこともある。
身体に染み込んでしまったどす黒い血はいくら洗い流しても流し切ることはできない。

そしてフランス流のアクション映画の魅力を確立したリュック・ベッソンはハリウッドに『レオン』という痕跡を残し、静かに表舞台から身を引いた。

しかしどれだけ時が流れようが、僕らは『ニキータ』を期待してしまうだろう。
『アサシン』ではなく『ニキータ』を。

これは個人的なイメージだが、女性的な繊細さを描くという面ではフランス映画が圧倒的に優れていると思う。
そしてそれをアクション映画として消化してしまったリュック・ベッソンの功績は絶大に思う。

★★★☆

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パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち

 2003年8月2日公開

監督:ゴア・バービンスキー

キャスト:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム

これぞディズニー渾身の一作!
ディズニーランドの人気アトラクション「カリブの海賊」をモチーフに壮大に映画化してみせた会心作。

しかもジョニー&オーリーのゴールデンコンビ。

とにかくジャック・スパロウの虜になる。
愛すべきネズミがミッキーマウスなら、
愛すべき海賊はそう、
ジャック・スパロウ!

男が心底男に惚れた。
ジョニー・デップ、あなたは反則なくらい魅力的です。
オーランド・ブルームやキーラ・ナイトレイらがディズニーの魅力を最大限に表現する中で、
ジャック・スパロウだけは明らかに新種のスパイスでした。

これはこれで完結してます。
しかし人気作の宿命で続編は生まれます。
そこにはやはり賛否両論が巻き起こって-
話が逸れました。

とにかくグッドエンターテイメントですよ。
敵味方関わらず、キャラがとことん素晴らしい。

限られた時間でそれぞれの魅力を最大限に詰め込んだ。

説明不要。
観れば良い。
楽しめば良い。

ディズニーは我々の心を掴むマジックを知っている。

★★★☆

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バタフライ・エフェクト

2005年5月14日公開

監督:エリック・ブレス 、J・マッキー・グルーバー

キャスト:アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート

『オーロラの彼方へ』『サマータイムマシン・ブルース』『時をかける少女』そして『ドラえもん』
時間を越えたストーリーには常に魅了されてきた。

もちろんこの『バタフライ・エフェクト』も例外ではない。
いや本作は例外的に衝撃作。
あまりにも切ない。
「最も哀しいハッピーエンド」とはよく言ったものだ。

本作は日記というアイテムが鍵となっています。
ある意味デスノートより凄いです。
愛する人のために何度も過去をすり替えます。

そして最終的に選択した結論は…

極上のスリルとサスペンスを一般ピープルの想像力のギリギリのところで展開してくれます。
我々は少なからず考えさせられ、理解できる範囲での複雑なストーリー。

ラストシーンからOasisまでの流れは号泣もの。
DVDではエンディングの別パターンもいくつか用意されれてあるので興味深いところ。

個人的イチ押し映画です。
もしも過去を操ることできるなら。
それだけで心踊ります!

ディレクターズ・カット版のラストシーンは衝撃です!!

★★★★

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パッション

2004年5月1日公開

監督:メル・ギブソン

キャスト:ジム・カビーゼル、マヤ・モルゲンステルン

イエス・キリストを描くのは勇気のいることだと思う。
宗教が絡めば反発は確実だからだ。

そこにメル・ギブソンが挑んできた。
イエス・キリストの最後の12時間。

それをここまでリアルに…

痛みと屈辱に耐えながら
最後まで神を信じ
人に道を示そうとする姿。

信者ならずともその苦しみに心砕かれたことだろう。

更にそこには手を差し伸べる母の姿が…
そして母がいることの光を示す。
これが母の偉大さ。
母という存在意義。

目を背けたくなるシーンの数々ではありますが、
そこに込められた魂や願いを感じ取ることが
この作品の鑑賞に大いなる意義を与えてくれます。

この物語がハリウッド史上に残る興行収入を上げた事実が驚愕だ。
ますますアメリカという国が分からない…
観るに耐えない暴力にもう観なくても済むという感覚。
逆にその開放感を求めるのだろうか?

感情移入できるクリスチャンとは見出すものが明らかに違ってくるかもしれません。
でも人の痛みを理解する力、何かを信じる力は誰にも備わっているはずです。

★★☆

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母なる証明

2009年10月31日公開

監督:ポン・ジュノ

キャスト:キム・ヘジャ、ウォンビン

めでたいことに我が家にも今年ついに念願の第一子が誕生する。

当然ながら僕は父になるわけだ。
父として「父なる証明」をしなければならない。

しかし子供にとってそれ以上に近い存在となるのが母だろう。
そんな持論で嫁に子育ての責任を押し付けるような旦那は困ったものだが、
母が「母なる証明」を示すことは子供にとって父のそれ以上に大きな意味を持つことだろう。

しかし父にしろ母にしろ、その愛の強さゆえに過保護になってしまうと偏った愛となってしまうのかもしれない。

息子を誰よりも近くで見守り息子のことを誰よりもよく知る母は、
突き付けられた事実を受け入れることができず、真実を求め奔走する。

こういったケースの結末のパターンは限られたもの。
真犯人にハメられているか、実際に本人が犯人か。
ポン・ジュノ監督はきっとオチがバレるのは承知の上で作っていることだろう。

しかしこの作品の本質はヒューマンドラマであり、真相に近づけば近づくほど、それに比例して母なる本性も覚醒してゆく。
実はそれこそがメインテーマであり、タイトルにもある「母」の感情なのだ。

ただこの母に共感できる人はまずいないだろう。
たとえ母親としての息子への愛には共感できたとしても、その行為には共感できないだろう。

暴走に暴走を重ねる姿はまさしく狂気。
目的は無実を証明することなのか、それとも事実がどうであれただ愛する息子を助けたいだけなのか。
そこに隠された過去とは?
ツボに鍼を打てば辛い記憶を忘れられる?
本当にそんなことができるのか?
奇妙にもただただ踊り続けるしかない。

★★★☆

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バベル

2007年4月28日公開

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

キャスト:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット

これはまず時代背景というものがありーの、だからこれは過去を知る映画となるはずであります。
その上で日本のイメージも鮮明に描かれています。
日本というより東京ですかね。
おれシモキタのクラブで酒と音楽で頭が回った状態で踊った時の残像が蘇ってきましたし、それはもしかしたら耳が聞こえない者にも伝わるのかもしれないと思いました。

舞台はモロッコ、メキシコ、アメリカ、日本。
国境の壁、そこに日本のストーリーを組み込む必要性を感じなかったのは正直な感想です。
強引だったというか、統一性という意味で日本だけは少し異質に感じたのです。

しかし菊地凜子の存在感はピカイチでした。
その圧巻の演技はあのブラット・ピットをも喰ってしまうインパクトがありました。

この壮大な物語が伝えようとするメッセージ。
それは社会問題としては単純明快なように感じます。

ただ僕は前述した組み込む必要性を感じなかった東京の描写が何より鮮明に印象に残りました。

★★☆

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パンズ・ラビリンス

2007年10月6日公開

監督:ギレルモ・デル・トロ

キャスト:セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ

絶望に生きた現実の中の微かな希望

何かを勝ち取るためには犠牲がつきもので

恐怖や誘惑に負けたとしても
チャンスは与えられる

ファンタジーがヒューマンドラマを超えた瞬間
それは人としての生き方を示すから

現実は悍ましく青い
だからこそお伽の色は華やかで

死して存在は高貴となる
しかしそれは現実には何の意味も成さず

哀しみの感情は
激情の波に飲まれ
それは涙と叫びとなる

夢が幻想化するのではなく
幻想が夢となるのだ
魔法は夢を示す
魔法は心に潜む
否定する大人
否定する論理
否定する現実

拒むな!
悪魔が見える
近づく恐怖
それは…

死神だって神
神を信じる者に神が存在するように-

捧げよ!
さもなくば…

人+夢=儚
でもその色彩はあまりにも美しい

★★★★★

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ハンニバル

2001年4月7日公開

監督:リドリー・スコット

キャスト:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア

グロテスク!
しかしそこにはむしろ知的な品性すら感じる。

ゆるい映画は退屈だ。!
強い刺激と衝撃が欲しい。
アブノーマル!
そこに価値を見出だせなければ嫌悪感に飲まれればいい。
良質なホラーと思って女の子と観ても意味ないぞ。
ただ怖いだけで、「キャー!」と抱きつかれるわけでもない。
吐き気をもよおすだけだ。

なぜにそんな…

この映画は禁断をやらかした。
明らかにハンニバル・レクターがヒーローとして描かれてしまったのだ。
まさにアンソニー・ホプキンスの一人舞台。

『ハンニバル』はサイコ・サスペンスというよりエログロホラー。
クラリスとレクターの間の性的な興味に目を奪われ、サスペンスの本質には全く目がいかない。
レクターという魅力的なキャラクターと、あまりに美しい映像の力だけで強引に乗り切ってしまった。
そんな印象も強い。
極端に言えばストーリー不在。
まさにハンニバル・レクターの華麗なるプロモーション映画。
自由の身となったハンニバルは大暴れ。

精神異常な行為を続けてもなぜか人々を引き付ける。

そう、彼はただの精神異常者ではない。
紳士で知的さも兼ね備えているのだ。
殺害方法は残虐ながら可憐。
ハンニバルにとって殺人とは快楽だ。
銃では快楽が満たされないから、ナイフや弓矢で殺すのだ。
彼が殺せばなぜかそれは美学と化す。

最後に、口説いようだが『ハンニバル』はシリーズの中で
最もグロテスクで残虐な作品であることだけ、念押ししておきます。

★★

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ピアニスト

2002年2月2日公開

監督:ミヒャエル・ハネケ

キャスト:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル

G線上に恐怖を感じたら
バッハの顔は悪魔に見える

鬼才ミヒャエル・ハネケの狂世界。
映画製作は彼にとってのファニーゲームなのかもしれない。

音楽は神秘。
ピアノは聖域。
それを侵食するエロス。

しかしこれはあまりにも不愉快。
そして異常。
何プレイだ?
クレイジープレイ?

そこに秘められた謎。
求めるためには奉仕が…

卑猥
病気

母?
そこには衝撃の…

そして不愉快さは加速する。
エロスとは性欲を駆り立てて観る者を興奮させるものだと思ってた。

しかしエロスには嫌悪感も混在している。
それが上回ってしまったら、もう観るに堪えない。

もどかしさを越えて悍ましさを感じ、性的描写の嫌悪感に観ていて苦しかった。
しかし最後まで観れてしまったのはやはり閉鎖された人間の心の本質の部分を表現し、ミステリアスな好奇心を刺激してくれたから。
そして集約のラストシーン。

好き嫌いがはっきり分かれるのはハネケ作品の宿命かもしれない。
しかしカンヌ国際映画祭グランプリは頷ける内容で。
言い方は変だが「カンヌっぽい作品」としては代表作といえる。

批評として述べると傑作。
感想として述べると駄作。

いや違う。
カンヌ的見方で観るか、アカデミー的見方で観るか、ですかね…

★☆

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羊たちの沈黙

2001年3月17日公開

監督:ジョナサン・デミ

キャスト:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス

ジョディー・フォスターの演技力。
レクター博士の存在感。

連続女性誘拐事件…
皮を剥がれて放置…
被害者はいつも大柄で小太りな女性…
クラリスに興味を抱くレクター…
心の内を見透かされていくクラリス…
いつしかクラリスとレクターの間には…

この映画の見所はやはり、クラリスとレクター博士の緊迫感溢れる取引。

更にはレクター博士が、逃亡をし掛ける際の図書室での惨殺シーン。
それは恐ろしい光景でありながら、美しさすら感じてしまう。

シナリオにも無駄がない。
ストーリーの完成度はきわめて高い。
残酷なサイコ・サスペンス。

しかしそれ以上にやはりクラリスとレクターの関係。
2人の駆引きや会話には異様な緊張感と、知的な興奮が溢れている。
なぜ、レクター博士はクラリスに興味を持ったのか?
クラリスはなぜ、レクター博士に惹かれていったのか?
『ハンニバル』の伏線として、その歪んだ愛情こそを見所としてほしい。

そう、この映画の最大の魅力は間違いなくクラリスとレクター博士なのだ。

幼い頃の経験と、殉職した警官であった父親への愛情から警官を志したクラリス。
その父親への敬愛は、年上の男性に魅かれる要素となっていたかもしれない。

美しく、知性的で、勇気も兼ね備えたクラリス。
やはりジョディー・フォスターが適任だ。

知的で紳士的なレクター博士。
アンソニー・ホプキンスは「レクターと私は違う」と言っているそうだ。しかし瞬きもせず凝視してクラリスに迫る博士の深い瞳に、やはりレクターはホプキンス以外に考えられないと唸らせる。

羊とは何であるのか?
沈黙とは何であるのか?
その意味は、鑑賞してあなたが感じるもの-

★★★☆

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ファーゴ

1996年11月9日公開

監督:ジョエル・コーエン

キャスト:フランシス・マクドーマンド、スティーブ・ブシェーミ

借金返済のために、男2人を利用して妻の偽装誘拐を計画した中古車販売業者ジェリー。
だが計画は思わぬ方向に向かい、予期せぬ展開に3人もの死者が出てしまう。
捜査に乗りだした女性警察署長のマージは冷静に着々と事件の真相に迫っていく・・・

恐ろしい事件をコメディータッチで描くシリアスかつユニークかつ滑稽な作品。

思い込みが積み重なり悲劇を生む。
皆自分のことしか考えない。
だからきっと報いを受けることでしょう。
対照的にまともだったマージー夫婦は幸せをかみしめる!というのが常套手段。

観る者のの心を弄ぶコーエン兄弟の最高傑作と呼ばれるに相応しく、実話の誘拐殺人事件を忠実に再現したというそれそのものがコメディー?
それすらジョークであるという説も飛び交うほど。
そんな我々の反応もコーエン兄弟は楽しんでいるのではないだろうか…

ちなみにファーゴとはアメリカ合衆国ノースダコタ州の都市の名前です。

★★☆

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ファイトクラブ

1999年12月11日公開

監督:デビッド・フィンチャー、ブラッド・ピット

キャスト:エドワード・ノートン

ブラッド・ピットとデビッド・フィンチャーという『セブン』の最強コンビが再びタッグを組んだ衝撃作。

加えてブラッド・ピットとエドワード・ノートンという超を何個付けても付け足りないくらいの超黄金コンビ!

もう輝きまくってます。

ゾクゾクしてドキドキハラハラして奇想天外な結末を迎える。
これがサスペンスの醍醐味じゃないでしょうか。

この『ファイトクラブ』に関してはサスペンス要素が特別表に出ないのにサスペンス要素満載なような…
エンターテイメントなサスペンス。

強い、キレる、カッコイイ。
そりゃ男は憧れるさ。

暴力は強さの象徴。
アメリカも捨てたもんじゃない。
でも真の強さって自分自身に打ち勝つことであり、結局これって弱い男の映画なんですよね、きっと。

★★★☆

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ファニーゲーム

2001年10月20日公開

監督:ミヒャエル・ハネケ

キャスト:スザンヌ・ロタール、ウルリッヒ・ミューエ

毒の香りがする。

癒しの音楽の後に破壊的な音楽が流された…

この映画は虚構か、現実か。

なんなんだ、これは!
どうしてこんな…

後味の悪い映画なんてたくさん観てきた。
しかしこれは言葉では言い表せないような…

絶叫がこだまする。
そこに何が残された?

革新にして衝撃!
ありえないほどにのしかかる重圧感。

植え付けられた絶望と恐怖は消えることはないだろう。

屈辱なんてものは余裕がなければ感じないもの…
すなわち生死の境目にプライドなんてものは存在しない。

待ち受ける運命は生か死か…

これは遊びなんだ。
そう、ゲームなんだ。

絶望の跡には長い沈黙が…

運命なんて言葉では片付けられない。
これほど後味の悪い映画が他にあるだろうか。

涙はこんなもののために流すものなのか?
ただただ怒りが…

ハッピーエンドってなんだ?
観てる我々の心も掻きむしられる。
「巻き戻し」は禁じ手だ。
救いがなさすぎる。
この映画の残像と余韻は人の心を痛め続ける…

ミヒャエル・ハネケ、あなたは描いてはいけない映画を描いてしまった。

★★★☆

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ブラック・スワン

2011年5月11日公開

監督:ダーレン・アロノフスキー

キャスト:ナタリー・ポートマン、バンサン・カッセル

対照的な白鳥と黒鳥を演じ分けなければならない『白鳥の湖』の主演に抜擢された若きバレリーナの苦悩を描くサイコ・サスペンス。

どこかダークなエロスに期待した僕はナタリーじゃ濃厚エロスが望めないじゃないのでは…と不安視していたが、そんな心配は無用だった。
何せ彼女は処女の役なんだから。
まるで少女のように汚れない透明感を感じるそのカラダは僕の奥底に眠っていたサディストの血を呼び起こすには十分すぎる。

サディストの権化ともいえるアロノフスキー監督は当然の如くその透き通ったカラダを傷つける。
血で滲んだ傷だらけの皮膚が映し出される。
この監督にとって観る者がついつい映像から目を背けてしまうのが快感なのだろうか?
実に不愉快。
更にはかつて僕を魅了してくれたウィノナ・ライダーに
ナタリー・ポートマンから主役の座を奪われお払い箱になったかつてのプリマドンナ
というあまりにも残酷な役を与えやがるもんだから、僕の心はズタズタだ。
主役を奪ったのがナタリー・ポートマンでなかったら
もしかしたらこれは怒りに変わっていたかもしれない。

『ブラック・スワン』の描きたかったテーマは重圧やら葛藤から迫りくる恐怖というのももちろんだが、本質は若さと老い、美しさと醜さといった女性にデリケートな部分を容赦なく残酷に暴き出すことだったのかもしれない。

そして僕の心で輝き続けていたウィノナ・ライダーはとっくに終焉していたことを改めて思い知らされたわけだ。

あぁマチルダ、君もいつかは…

★★★☆

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マスク

1995年2月25日公開

監督:チャック・ラッセル

キャスト:ジム・キャリー、キャメロン・ディアス

ヒーロー+変態=エンターテイメント。

そう言うと笑いのカリスマ・松本人志が変態的にヒーローを描いた『大日本人』も思い出す。
しかしお笑いのプロフェッショナルがいかにその才能を活かそうとも、変態ヒーローといえば…
やはり『マスク』なのである。

洗練された話術ではない。
漫画やアニメに見られるような現実離れした表現を誇張させ際立たせてみせた。

それは主人公が怪しげなマスクをかぶったその瞬間に起こるマジック!

目覚まし時計が跳びはねてみせれば、マスクはポケットの中からありえないでかさのハンマーを取り出し時計をぶち壊す。

顔から目玉がビヨーンと飛び出す。

地面に落ちると落ちた衝撃で体がペラペラになる。

走ると足がグルグル渦巻きのように回転する。

まさにアニメ!
お馴染みのベタなシーンを実写世界に持ち込んだだけ。

ヒーロー+変態=エンターテイメント!

そう、この単純明快さには誰も勝てないのだ。

本作はジム・キャリーの出世作となったがこれが幸か不幸か、彼のコメディー俳優的イメージを完全に植え付ける結果となった。

そして何よりキャメロン・ディアス!
あまりにセクシーすぎて、ただただ見惚れる…

★★★☆

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マスク2

2005年4月16日公開

監督:ローレンス・ガターマン

キャスト:ジェイミー・ケネディ、トレイラー・ハワード

ご存知『マスク』のパート2。
ジム・キャリーもキャメロン・ディアスもいない『マスク』。
これを挑戦的ととるか。
それともただ予算的に人気者になった二人を呼べなかっただけととるか。

パート2といっても前作とのつながりはなく、例のマスクが今度は別の男のもとに渡り、全く関連性のない騒動を巻き起こすだけ。
前作をおさらいする必要もないだろう。

続編というのもがっかりさせられるパターンが多いが、つながりのない手軽な二番煎じなんてものにはよりがっかりさせられる。

自慢のCG技術に関しても、ジム・キャリーのコメディー演技にも敵わない。

結果的に残念ながら人気者になった二人を呼べなかっただけととられても仕方のない内容だった。

そして人気気映画の続編にありがちな、ただ前作のアイディアを利用して似たような話を作っただけというもの。
それが悪いとは思わないし、俳優のチェンジも挑戦的にもとれるが、失敗すれば前作の魅力が損なわれたうえの単なる二番煎じとなり、とにかく自滅の印象がより強くなってしまう。

ヒーロー+変態=エンターテイメント?

さすがにこれでもう続編はないかな?

★☆

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マトリックス

1999年9月11日公開

監督:アンディ・ウォシャウスキー 、ラリー・ウォシャウスキー

キャスト:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン

人間はコンピュータによって作られた仮想の現実に生きる。
しかし真実の世界では人間はコンピュータの人工頭脳によって完全に支配されている。
そんなわけで人間世界の救世主が人口頭脳に戦いを挑む。

SFの進むべき道の可能性を切り開く、もの凄い発想だ。
僕も自分が生きている世界がコンピュータで作られているとまでは感じたことはないが、作られた現実世界を生きているのではないかと感じたことがあるのは事実。

しかしミステリアスな緊張感が次第に薄れ、終わってみればCGを駆使した映像ショーだったという感想になるのが悲しい。
それはそれでいいんだけどそれでは惜しすぎるほどの期待感だったもんで…

まあでも素直に面白かったですよ。
ただ世間の大騒ぎは行き過ぎですね。

そういやMarilyn Mansonが高らかに歌ってましたね。
「Rock is Dead」と。

時代は変革を求める。
この『マトリックス』もその象徴です。

★★★

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マンダレイ

2006年3月11日公開

監督:ラース・フォン・トリアー

キャスト:ブライス・ダラス・ハワード、イザック・ド・バンコレ

ドッグヴィルを離れ、父と共に新たな居住地を求めていたグレース。
次にたどり着いたのは激しい人種差別が行われるマンダレイの大農園。
奴隷制度を生んだのは白人であり、白人として責任を感じ取ったグレースは、黒人奴隷達に自由を与え教育を施そうと、父と離れその場に残るのだが…。

独特のセットは『ドッグヴィル』からそのままですが、主人公のグレースは、ニコール・キッドマンからブライス・ダラス・ハワードへチェンジしてます。

ドッグヴィルでは、弱い立場でしかなく、理不尽な扱いを受けたグレースですが、マンダレイでは違います。
ドッグヴィルでの経験を活かしてか、絶大な影響力で大農園に理想郷を築いていくのです。

テーマは自由。
生物は自由を求めます。
しかし人間は自由を手に入れることで、逆に苦しむものなのではないでしょうか。
自由にするということと好きにするということを勘違いしてしまうのでしょうか。
グレースがマンダレイの黒人奴隷たちに提供した民主主義という自由は、彼女の中での理想の押し付けでしかなかったのです。
彼女の中でそれは絶対的な正解なのです。
でも正しいことが必ず正しいとは限らないのが人間の難しさで。
突然自由に解放されてもすぐに順応できるわけもなく、ただ困惑するだけです。
我々だって何かしらのルールやら規制やらがあってこそ、成り立っているはず。
きっと不自由の中に自由はあるんだと思うのです。

自らの傲慢さに気付いたその時は、人間の本質的な悪への嘆きと変わることでしょう。

きっと人間とは裏切りの文化を生きる種族なのです…

★★☆

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Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼

2008年5月24日公開

監督:ブルース・A・エバンス

キャスト:ケビン・コスナー、デミ・ムーア

依存症…
その衝動を抑えることなどできるわけもなく、同じ過ちを繰り返しては後悔する日々…

人間の心には必ず闇の部分をが潜んでいるものだと思います。
その闇の部分が心を侵食しつくしてしまうとどうなってしまうのか?

またそんな苦悩を吹き飛ばし生きていくにはどうすればいいのでしょうか?

その解決法はきっと誰かを愛し誰かに愛されることだと思います。
心が愛に満たされるようものなら、闇の部分も覆いつくされるのではないでしょうか。
少なくとも闇の部分は少なくなると思います。
かなりクサイこと言ってますが、愛というものにはそれだけの力があると信じたいです。

例えば恋愛依存症で悩んでる人がいたら、この映画を観せてあげてください。
殺人依存症なんかよりよっぽど人間らしくていいと思えるはずです。

でもそう考えたらブルックスの苦悩は凄まじいものですし、本作にはその苦悩をもう少し強く表現してほしかったなぁ、と。
闇の人格を形として見せてしまう手法はなかなか興味深かったのですが、悪の人格にそそのかされると応じてしまう過程が案外あっさりしているので苦悩があまり伝わってこなかったのが残念でなりません。

まあそんなわけでプラス面もマイナス面も、言いたいこと盛り沢山な作品ですが、ネタバレは避けたい作品なのでこの辺で止めておきます。

とにかくここで言いたかったことはこれです。

「人と人との関係って殺し殺されるものではなく、愛し愛されるものである」

うん、なんか良いこと言った気がするw

★★★

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ミスティック・リバー

2004年1月10日公開

監督:クリント・イーストウッド

キャスト:ショーン・ペン、ティム・ロビンス

ショーン・ペン最強宣言!
俳優の渋すぎる演技に魅了されます。

心理の裏をかくサスペンス。
それをクリント・イーストウッドが人間ドラマとして描く。

娘を殺された父、事件を追う刑事、容疑をかけられた男は彼等の親友。
少年時代の傷痕が男たちの精神を崩壊させる。
犯罪に巻き込まれた三人が殺人事件をきっかけに再会。

ショーン・ペンの狂気を秘めたオーラ。
ティム・ロビンスの醸し出す哀愁。
そして事件を追うケヴィン・ベーコン。
この構図がたまらない。

刑事は事件の解決を。
父は復讐を。

捜査が掴んだ真相と復讐の念から掴んだ真相には小さな誤差が生じていた。
しかしその小さな誤差はあまりにも大きすぎた。

ショーン・ペンの静たる殺気に悪寒が走る。
彼の炎は青かった。
その熱すぎる炎はあまりにも冷たく見えて…

ショーン・ペン最強宣言!
それは本作で思い知る。

この映画が語るのは三人の男の心理とドラマ、そして事件の真相。
残された者の行方は我々が想像するしかない。

吐き気が止まらない。
精神まで吐き出されそう。
おれ、抜け殻になってしまいました…

★★★★

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M:I-2

2000年7月8日公開

監督:ジョン・ウー

キャスト:トム・クルーズ、ダグレイ・スコット

アクション映画としては間違いなく大作。
しかしこれはスパイを題材とした『ミッション・インポッシブル』
よって賛否が分かれるところ。
ハトと二丁拳銃、そしてスローモーション!
ジョン・ウー さん、アピールしすぎだよ・・・
いや、確かにスリルあったさ、ハラハラしたさ。
でも・・『ミッション・インポッシブル』らしさを音楽とトム・クルーズで誤魔化さないで。
アクションをクドイと感じてしまったのは俺だけじゃないはず。

るぱんという名で通している自分だからこそ余計に主張したい。
『ミッション・インポッシブル』の魅力は『ルパン三世』的なクールな部分にあると思うのさ。
おれ、アクション映画苦手なんですよ。
そこを主張されて正直引いてしまったんです。
基本的に否定的なことってあまり書かない主義なのですが・・
続編ってこういう書き方になっちゃうんだよなあ。

イメージと期待があって・・
そこにギャップがあると批判になるし、逆にイメージ通りすぎても批判になる。
ベストはイメージを崩さず、期待を良い意味で裏切ることなんだと思う。

どうなんだろ?
このアクションの魅力に取り憑かれるか、
スパイ映画としての失望感を味わうか、ってところですよね。
前者も一般的であり、後者も一般的である。

トム・クルーズのご機嫌取ってトムの魅力を最大限に活かそうという見え見えの魂胆が個人的に好かないっす。

★★

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ミリオンダラーベイビー

2005年5月28日公開

監督:クリント・イーストウッド

キャスト:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク

まず僕はスポーツが大好きです。

ボクシングももちろん大好物です。
でもスポーツ映画ってなんか安っぽく感じてしまうんですよね。
やっぱり筋書きがないから感動できる!
そういう素晴らしさがスポーツにはあるからでしょう。

しかし!
それでもやっぱりあるんですよ。
映画ならではの感動は。

そう、結局人間ドラマなんです。
ボクシングはその手段。
栄光があってこその挫折の苦しみ…
胸が締め付けられます。

愛情があるから仕事にも熱が入る。
それはたとえポンコツになっても…
愛の形は様々。
恋愛だけじゃない。
家族愛だけじゃない。

そこには誰にも入り込めない絆がある。

また、生かすか殺すか、生きるか死ぬかのの選択というのは、
人間の永遠のテーマであり時に正解が正解と言い切れないこともある実に難しい命題なのだ。

★★★☆

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麦の穂をゆらす風

2006年11月18日公開

監督:ケン・ローチ

キャスト:キリアン・マーフィ、ポードリック・ディレーニー

英国からの独立を目指す、アイルランドの独立戦争が描かれています。

強力なリーダシップを持つ兄。
医者を志す優しい弟。
二人の兄弟を中心にストーリーは進んでいきます。

アイルランドの独立戦争の結末までは描かれていません。

相手が暴力を使って押さえ込むなら、こちらも暴力で対抗していく。
家族や恋人までも巻き込んで…
人と人とが争う事はこれほどまで残酷なものでしょうか。

このような状態が、今も世界各地で起こっててます。
こんな状態がいつまで続くのでしょうか。
みんな平和に暮らしたいだけなのに…

自由を獲得するという共通の目標をもった兄弟が、一つの到達点に達した時、見解に相違が生じます。
そして、最後には、悲劇的な終末を迎えます。
どうして争いを避けられなかったのか…

涙は感動の涙ではありません。
どちらかというと、虚しさ、切なさの涙です。

『麦の穂をゆらす風』とはイギリス支配への抵抗を歌う曲で抵抗運動のシンボル的な曲だそうです。
もちろん映画の中でもこの歌を聴くことができます。

イギリスによるアイルランドの植民地支配。
移民の大波はここから始まったのです。

希望はきっとある!
現在アイルランドは独立し、繁栄しているではありませんか。

時に後戻りがあったとしても

歴史は確実に前向きに進んでゆくのです!

★★★☆

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メメント

2001年11月3日公開

監督:クリストファー・ノーラン

キャスト:ガイ・ピアース、キャリー=アン・モス

結果は判るが過程が解らない。
『メメント』のDVDを買い、『メメント』という映画を観たいと思う。
『メメント』を観ることができたが、このDVDがどうしてどうなって僕に『メメント』を観せているのかは解らない。
そもそもどこでどうして『メメント』を観たくなったのかすら忘れている。
メモがなければ、記録がなければ消えてゆく。

過去として人間に残されるのは記憶と記録のみ。
記憶を消されて今、僕に何が残るだろうか?

過去のない未来はきっと寂しいものだろう。
人間って善くも悪くも過去にすがって孤独を埋めるものだと思うから。

記憶をさがす旅に出よう。
果てしなく続く海に。
押し寄せる嘘と真実の波を掻き分けながら泳ぐ。

しかし泳ぐのが苦手な僕はいつしか波にのまれ…

流された僕の前には川。
そこではもう思い出なんて必要ない。
ただ無意識に、渡るだけ…

★★★☆

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モンスター

2004年9月25日公開

監督:パティ・ジェンキンズ

キャスト:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ

これは重い。
でも引き込まれてしまってもう…
アイリーン・ウォーレスの大量殺人犯の真相。
それはやはり愛。
生きる糧があれば人は何でもやる。

そして愛するひとの道を外させてしまった罪。
愛ゆえに将来を狂わせてしまった罪。

モンスターの正体は愛に全てを投げ売りした魂の塊。

セルビーは本当に愛らしかった。
クリスティーナ・リッチの可愛らしさはセルビーに適役だった。
彼女はアイリーンにとってたったひとつの光明なのだ。

女優の演技で話題になりましたが、あまりにもすごいです。
シャーリーズ・セロンは鬼神の演技です。

こんな痛々しいモンスターをもう世に出さないためにも、
向き合って考えなくてはならない作品だと思います。

★★★★☆

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ユア・マイ・サンシャイン

2006年11月3日公開

監督:パク・ジンピョ

キャスト:チョン・ドヨン、ファン・ジョンミン

何があっても君を守る

誰かを愛することで人は少しばかり強くなる
誰かを愛することで人はとことん弱くなる

愛する人といられる僕はきっと幸せ者なのだろう
しかしその幸せが突然消え失せてしまったとしたら、僕はどうなってしまうのだろう

永遠を誓った愛をいつまでも待ち続けるだろうか

世界でいちばん幸せにすると誓ったんだ
これから流すこともあるだろう悲しみの涙もすべて洗い流してあげるんだ

どれだけ周りに迷惑かけようが、罵声を浴びせられようが、それが自分らしさ

幸せは脆いかもしれない
弱くなった自分を実感するかもしれない
でも少しずつでも強くなれる気がするよ
少しずつながら、それはどこまでも…

だから誰かを愛することで人は少しばかり強くなるんだ

★★★

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ユージュアル・サスペクツ

1996年4月13日公開

監督:ブライアン・シンガー

キャスト:スティーブン・ボールドウィン、ガブリエル・バーン

キートン
コバヤシ
カイザー・ソゼ

「B級サスペンスの最高傑作!」なーんて言ってでもみたら、この作品が手を挙げて「オレだ」とアピールしてきてくれるのではないだろうか。

依頼人はカイザー・ソゼ。

カイザー・ソゼなど存在しない。
でっちあげだ。

しかしそこには数々の恐ろしい伝説が残されている。

ソゼがすごいところは自分の存在を謎にしたところ。

キートンは一度死んでいる。

キートンは女に惚れていたのか?
それとも女を利用しているだけなのか?

カイザー・ソゼなど存在しない?

ソゼは一度決めたことを決して変えない。

ソゼは悪魔。
悪魔は撃てない。

ソゼがすごいところは自分の存在を謎にしたところ。

そしてそれが終わると-

消えた。

★★★★☆

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ゆりかごを揺らす手

1992年4月11日公開

監督:カーティス・ハンソン

キャスト:アナベラ・シオラ、レベッカ・デモーネイ

復讐に身を捧げた女の復讐劇を描いたサイコスリラーの傑作。

やはりペイトン役のレベッカ・デモーネイに目を惹かれるが、
全体的にも演技が秀逸で、細かい心理描写に感情移入しやすい作品に仕上がっている。

狂気するレベッカは圧巻。
悪魔に魂を売った女の正体は時の経過と共に…

計画は用意周到だ。
唐突とは思えない。
全てを奪ってゆく。
全てを奪われてゆく。
女の闘い?
だとしたら一方的じゃないか。

早く…
早く!!
事件には必ず裏付けがあるはず。
推理してくれ。
観てるおれが知ってもどうにもならない。
迫りくる恐怖とそれを切り開く扉が同居する。
そう、これはサイコスリラーとして、正統派すぎる。
だからこそ安心してオススメできる。

その身を悪魔に捧げた女の復讐は家族という深い愛の絆に打ち勝つことができるか!?

愛を揺らがせることは簡単かもしれない。
しかし崩すことは…
この作品が家族愛の偉大さを示してくれるか、それとも脆さを露呈させるかは…物語の結末に集約されるはず。

いずれにせよ、この映画には勝ち負けが存在する。
そういうことだ。

★★★

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4ヶ月、3週と2日

2008年3月1日公開

監督:クリスティアン・ムンジウ

キャスト:アナマリア・マリンカ、ローラ・バシリウ

4ヶ月、3週と2日…
それは嘘。

是枝裕和と北野武のいいとこどりしたような超絶なカメラワーク。

献身的な主人公の心は常に置き去りにされているような…
ルーマニアからの挑戦状は僕にはあまりにも刺激が強すぎました。
いかにも想像任せな撮り方ではありますが、リアルすぎる演出は過剰に生々しい想像を脳に植え付けます。
そして見せられていない映像にすら目を背けるのです。

『容疑者Xの献身』なんてものが日本では人気ですが、こちらの献身にもタイトルをつけるならどうなるでしょうか。

結局たどりつくのは『4ヶ月、3週と2日』

目に見えないどころか、想像すらできないのに迫り来る恐怖と闘いながら献身的に責務を果たし終えるとそこには…

もう怒りを通り越して呆れます。
そしてエンディングの曲調の愉快なこと(笑)

監督の抱くテーマが解ってしまったかもしれません。
この映画はあらゆる意味で裏切りです。

今思えばオープニングのカットからラストシーンまで、何もかもが裏切りで成り立つ映画なのです。

映画を評価する際に自分の中には3つの評価があります。
ひとつは単純に自分が好きかどうか。
もうひとつは商品としての価値。
更にもうひとつは作品としての価値。

僕の中でこの『4ヶ月、3週と2日』は作品価値だけが飛び抜けて高いです。

基本的に人には薦めませんが、映画に対して志しや美学をお持ちならぜひ観てほしい。

いかにもパルムドールな作品だと思います。

★★☆

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ライフ・イズ・ビューティフル

1999年4月17日公開

監督:ロベルト・ベニーニ

キャスト:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ

子持ち父親の強さを最大限に表現した映画です。
前半にコミカルな部分を存分に見せているのが後半の子供の前で変わらぬ姿を見せる父により大きな感動をもらいます。

醍醐味は後半の父の姿なのですが、前半のコミカルなラブストーリーでも十分楽しめてしまいます。

まあとにかくとんでもない良作ということですね。
実は私が映画を本当の意味で好きになったのはたぶんこの映画がきっかけです。

『スターウォーズ』のような映画を最高の映画だと思い込んでいた
私の映画に対する固定観念を打ち砕き、
映画の真の素晴らしさを教えてくれた、そんな映画なのです。

決して『スターウォーズ』を 最高の映画ではないと言ってるわけではありません。
ただ視覚、聴覚を超えた心の部分を私に教えてくれたのがこの『ライフ・イズ・ビューティフル』なのです。

戦争映画にも描き方はいろいろありますが、これは断トツに好き。
ロベルト・ベニーニ万歳!!

★★★★★

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ラブ・オブ・ザ・ゲーム

2000年1月29日公開

監督:サム・ライミ

キャスト:ケビン・コスナー、ケリー・プレストン

ベースボールをこよなく愛するケビン・コスナーが、
引退と恋人への未練を抱えるベテラン大投手を熱演。
現役最後のマウンドでヤンキース打線に立ち向かう。
そのマウンドには彼の想いが込められていたかのような、
回想シーンがドラマチックに展開される。

監督はサム・ライミ。
ベタな感動ドラマだが、確実に泣ける安心感がある。

ベースボールというスポーツは表現の手段であり、そこには特別意味は成さない。

ただ背負うものが重ければ重いほど観る側も感情移入でき、力が入る。
僕はスポーツが好きだ。
そしてスポーツだからこそ生まれるドラマが好きだ。

★★

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ロード・オブ・ザ・リング

2002年3月2日公開

監督:ピーター・ジャクソン

キャスト:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン

『ロード・オブ・ザ・リング』
それは映画界史上最大のビッグプロジェクト。
そしてそれは一世一代の大博打の覚悟だったろう。
本気で成功を信じていなけりゃこんな勝負、できやしない。
そうであっても人並み外れた勇気がなければ…
三部作を一挙に撮りあげてしまおうという試み。過去にニュージーランドで作られた映画作品すべての製作費の合計額を上回る破格の制作費。
第一作で失敗なんてしてみれば、映画人としてのキャリア消滅も免れないだろう。
これに挑戦したのは『バッドテイスト』『ブレインデッド』といった良識から逸脱した、悪趣味な低俗オタク監督なのだから驚愕する。
その悪童の名は…
ピーター・ジャクソン!

そんなド変態野郎が最上級のファンタジーを作り上げたという意味でも破格(笑)

ゲームの世界だけで楽しんでいたRPGがついに本格的な実写映像として登場した。
そしてファンタジーでありながらもそこには重厚な人間ドラマが存在していた。

はい、第二部鑑賞決定!
ここから広がるであろう壮大な展開に胸踊らさずにはいられない。

★★★

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ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔

2003年2月22日公開

監督:ピーター・ジャクソン

キャスト:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン

いやー、何度見てもこの世界の構築力には圧倒されます。
三部作を一気に撮り上げてるわけなので当たり前といえば当たり前ですが、しっかり継承されています。
圧倒的な初期衝動にインパクトを持って行かれがちですが、『ロード・オブ・ザ・リング』って実は三部作を何度も観た方がより面白くなる気がしてきました。
世界構築が見事なまでに徹底されているので、国と国の関係や構図が見えてきて、観れば観るほど好きになるような気がします。
ただし連続で三部作を観てしまうと、延々九時間にも渡ってしまうという拷問っぷりがいかにもピーター・ジャクソンではありますが(笑)

特にこの二作目は戦闘シーンがスペクタクル!
そりゃもう見応えありすぎて感無量!
それもそのはず。
今回はアラゴルンを中心に物語が描かれてます。
自由を愛するさすらいの剣士が素晴らしい仲間たちと共に闘うことを経て、リーダーとしての自覚を持ち戦いに挑むわけです。
こうして王としての風格も開花されるわけで、これが最終章に繋がっていくわけですね。

さて主人公のフロドとサムですが、道案内ということでゴラムにつきまとわれることになるのですが、このゴラムがすごすぎます。
俳優さんに演じさせてそれをもとにCG化しているらしいですが、CGの違和感を全く感じさせないリアルさです。
そのゴラムは指輪の元の持ち主だったわけですが、フロドはそんなゴラムに自分を重ねていたんじゃないですかね。
ゴラムの酷い有様も今自分の持つ指輪のせいであるのがわかるから。
ゴラムがサムに暴言は吐かれたり暴力を振るわれたりすることも、自分のような気持ちになっちゃうわけです。
次第にやつれていくフロドはどうなっちゃうの?

次作は『王の帰還』
この「王」がアラゴルンでありますように!
ハッピーエンドを期待します!

★★★☆

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ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

2004年2月14日公開

監督:ピーター・ジャクソン

監督:ピーター・ジャクソン

キャスト:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン

いやー、走りました。
駆け抜けました。
魅力的なキャラクターたちがその輝きを増し続け、夢中で彼らを追いかけるけど、物語は容赦なく終局へ向かっていく。

ドタバタした進行は『指輪物語』の壮大さを物語っている気がします。
この物語は9時間でも短すぎたのか…

駆け抜けたピーター・ジャクソン。
己の人生を賭け、限界に挑んだその強い心が映画にも宿ったような…
正直に言いますと、原作未読な僕としてはストーリーとしても完成度の高かった過去二作と比べると、本作で『指輪物語』は破綻してしまっているのかもしれないと感じました。
「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」のオンパレード。
それをインターネットで調べて「なるほど」みたいな感じ。
しかしその「なぜ?」を放っておけないのは、僕がこの『ロード・オブ・ザ・リング』を通じて『指輪物語』に引き込まれた証です。

マラソンランナーは42.195kmという長い道程をいかに速くゴールできるかを考えながらペース配分します。

しかしピーター・ジャクソンは映画監督にして前人未踏の距離を初めからエンジン全開、全速力で駆け抜けた。
それが『ロード・オブ・ザ・リング』なのかもしれません。

マラソンでスタートから全速力で駆け抜けようとする選手を見たら、皆「あいつバカだ」と口を揃えることでしょう。

ピーター・ジャクソンはそれをやってのけたわけです。
そして失速したのがこの第三作。
しかしこの作品の凄いところは、失速しても情熱はむしろ加速しているところです。
いかにストーリー構成が粗く苦しくても、その情熱が観る者に伝わりそれがまた異質の感動を与えてくれたのです。

ピーター・ジャクソンはやはり愛すべきバカです。

バカじゃなきゃこんな大作挑めません。
これほどの大作は当分出てこないでしょう。

待ちましょう。
新しいバカの出現を!

★★★☆

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ロミオ&ジュリエット

1997年4月19日公開

監督:バズ・ラーマン

キャスト:レオナルド・ディカプリオ、クレア・デーンズ

『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督が、シェークスピアの代表作『ロミオとジュリエット』を時代背景をアレンジして映画化してしまいました。

今までにも幾度と映画化されてきた『ロミオとジュリエット』

繊細に描く作品が多い中で、異質にもファンキーにシャレた感じの『ロミオとジュリエット』がここに。

なんと、ロミオが銃を振り回すようなヤンチャな男で、ジュリエットは好奇心旺盛なジャジャ馬娘なのです。

当時ロック狂だった僕は「なんてロックな作品なんだ」と共感したものでした。

原作者への冒涜だ言われても仕方ない。
しかもそれがシェイクスピアだから波紋を呼ぶ。
だからこそ本作はロックなんです。
そもそもこの悲恋物語には見えない壁を破壊しようという思いが込められてるではありませんか。
実はロックテイストがお似合いなんですよ。

ドタバタなコメディ要素があったとしても、B級なアクション色があったとしても、たとえレオナルド・ディカプリオのアイドル映画であったとしても、やはり土台として、2人の美しい悲恋物語がきっちり描かれてます。

とても切なく哀しい。
でも最高にロマンチック。

その感想は変わらない。

★★☆

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